なぜ今、Iotなのか

1999年にIoTという言葉が初めて使われてから20年。今や、その言葉は、広く普及し、IT関係の者たちの耳にはタコができるほど馴染んだものになっている。
いつのまにか、IoTを取り入れる企業が珍しくなくなったものの、なぜ、我々はIoTに取り組まなくてはいけないのか。その理由を考えてみたことはあるだろうか。

なぜ今、IoTなのか。改めて考えてみたいと思う。

有名な理由としては、人口減少による労働者不足に備えているというものがある。
「平成29年版 情報通信白書」には、人口減少に関して下記のような記載がある。
『国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれている。』
ここまで人口が減ってしまうと、もちろん経済にも影響が出ると予想される。

総務省の発表している「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)には、IoTによる将来的な経済インパクトについて、『経済成長シナリオ』『ベースシナリオ』と名付けられた2パターンの試算が記載されている。
『経済成長シナリオ』は、2030年までに全企業のうち50.7%がIoT利活用をするようになるという試算で、資金不足や必要性がないなどの根本的な要因でIoTを導入しない企業以外は、IoT化が進み、企業改革も成功したという想定になっている。
一方『ベースシナリオ』は、2030年までにIoTを利活用しているのは全企業のうち27.7%になるという試算で、経済成長シナリオとは違い、根本的な要因以外に、人材不足やネットワークインフラの未整備などの問題がある企業はIoT化しなかったという想定で行われた試算である。IoTを利活用している企業の中でも企業改革まで成功した企業は、経済成長シナリオよりも少なく、全企業の中で18.0%に留まると想定されている。

この2パターンの試算では、下記の表の通り、就業者数、市場規模、実質GDPに大きく差が出るとされている。

2016年 経済成長シナリオ(2030年) ベースシナリオ(2030年)
就業者数 6440万人 6300万人 5561万人
実質GDP 522兆円 725兆円 593兆円
実質GDP成長率 1.2% 2.7% 0.8%

これはIoTによるテレワーク化や省力化で、女性や高齢者なども就労が可能になる結果だと考えられている。人口減少による就業者数の減少は避けられないが、IoT化することによって経済は将来的に成長すると想定されているのだ。

また、製造業では、IoTを導入することによって、人間を超えた技術でものづくりができるようになる。
例えば、製品の表面加工などは、人間の手と目で作業を行っていたが、機械を使用してデータと照らし合わせれば、人間には気付くことができなかったところまで作業を行うことが可能だ。
これまでは人間の力で行っていた作業を機械に行ってもらうことで、よりクオリティの高い商品を大量に生産できるようになる。クオリティの高い商品が市場に出回り、適正な値段で取引されれば経済は回っていく。

このように、IoT化は日本の未来の重要なカギとなっているが、平成も終わる2019年の今、IoTには時代の追い風が吹いている。

2018年には、ドコモが法人向けグローバルIoTソリューション「Globiot」を提供開始し、ソフトバンクもNB-IoTの商用サービスを開始した。KDDIの「IoT世界基盤」は、2019年度中にサービス開始を予定している。これらは、携帯会社が持っている回線を使ってIoTに使用できるサービスだ。これにより、企業のIoTへの参入のハードルは非常に下がった。

また、IoT普及に一役かったスマートフォンに関しても、まだ人気は続きそうだ。IoTが普及した背景には、スマートフォンの家庭への爆発的な普及により、部品やセンサなどが大量に生産されたため安く手に入るようになったことがあるのは有名な話だ。総務省「平成29年版 情報通信白書」に掲載されているIHS Technologyによるグラフでは、iphoneが発売された2007年には全世界で1.1億台だったスマートフォンの出荷台数は、2013年以降は毎年10億台を突破している。
日本人のスマートフォン保有率も年々増え続けており、総務省「平成30年版 情報通信白書」によると、日本人のスマートフォン保有率は2017年に60.9%となった。スマートフォン保有率の上昇と合わせて、IoT家電の需要も増えれば、家庭にもIoTが普及し、新たな需要や技術が生まれる可能性がある。

なぜ『今』、IoTなのか。
IoTが注目され始めてから、何度も問われてきたその質問の答えはただひとつ。
日本が存続していくには、IoTが不可欠だからである。今、世界中でIoTが注目されているのは、人間の生存本能だったのかもしれない。時代が進むにつれて、IoTの必要性はどんどん高まっていく。

◆参考資料

「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000062121_1.pdf

総務省『平成29年版 情報通信白書』
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111110.html

総務省『平成30年版 情報通信白書』
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd252110.html

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